社員旅行を計画するときに考えておくべきこと(余計な税金を払わないようにするために)

会社で利益が多く出そうなときに考えることの1つに社員旅行が挙げられます。
そんな社員旅行を計画するときに最低限考えておくべきことをまとめてみます。

社員旅行の費用すべてが経費になるわけではない!?

「最近は少なくなった」とか「まだまだやってるよ」とか「最近復活したよ」など、いろいろと聞かれる社員旅行。

経営者としてはよかれと思って企画するものの、従業員のなかには「私は行きたくない」みたいな人もいたりして、なかなか難しい問題かもしれません。

で、そんな「いろいろ」がある社員旅行ですが、「社員のために会社がお金を払う旅行」だとしても、必ずしもすべてが会社の経費として認められるわけではありません。

やりすぎる、派手すぎる、豪華すぎる、長期間すぎるなど、「すぎ」は、個人も会社も余計な税金を払わなければならなくなる可能性がありますので、注意が必要です。

税務上の基準は?

税法そのものでは、
なにがダメなのか?
の細かい基準は決められていません。

これらは、基本通達と呼ばれるもの(法律ではなく税務署側が判断の基準とするもの)に書かれています。

所得税基本通達36−30
課税しない経済的利益・・・・・使用者が負担するレクリエーションの費用

使用者が、従業員等のレクリエーションのために行う旅行の費用を負担することにより、これらの旅行に参加した従業員等が受ける経済的利益については、当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員等の参加割合・使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合などを総合的に勘案して実態に即した処理を行うこととするが、次のいずれの要件も満たしている場合には、原則として課税しなくて差し支えないものとする。

(1) 当該旅行に要する期間が4泊5日(目的地が海外の場合には、目的地における滞在日数による。)以内のものであること。
(2) 当該旅行に参加する従業員等の数が全従業員等(工場、支店等で行う場合には、当該工場、支店等の従業員等)の50%以上であること。

いろいろと書いてありますが、要は
・4泊5日以内(長すぎはダメ)
・全社員の50%以上が参加すること(一部の社員だけ、はダメ)
というのが1つの基準になっています。

50%以上と限定しているのは、ごく一部の社員だけが参加する場合、それは「福利厚生ではなくて私的な旅行じゃないの?」という問題が出てくるからなのでしょうね。

では、金額面のすぎる(豪華すぎる、高額すぎる)はどのように規定されているか?というと、こちらは通達でも明示されていません。

基本にあるのは、「少額不追及」という考え方で、「少額の現物支給などは給与として課税しない」というものがベースになっているようです。

あとは「少額とはいくらなのか?」の問題です。

国税庁ホームページのタックスアンサーでは次のような事例が掲載されています。

[事例1]

  1. イ 旅行期間     3泊4日
  2. ロ 費用及び負担状況 旅行費用15万円(内使用者負担7万円)
  3. ハ 参加割合     100%

・・・ 旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として非課税

[事例2]

  1. イ 旅行期間     4泊5日
  2. ロ 費用及び負担状況 旅行費用25万円(内使用者負担10万円)
  3. ハ 参加割合     100%

 ・・・ 旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として非課税

[事例3]

  1. イ 旅行期間     5泊6日
  2. ロ 費用及び負担状況 旅行費用30万円(内使用者負担15万円)
  3. ハ 参加割合     50%

 ・・・ 旅行期間が5泊6日以上のものについては、その旅行は、社会通念上一般に行われている旅行とは認められないことから課税

事例1・事例2は「少額不追及の趣旨を満たす」と書かれています。
・事例1:会社負担8万円/個人負担7万円=旅行費用15万円
・事例2:会社負担15万円/個人負担10万円=旅行費用25万円

金額という形式だけで判断できないケースもありますが、少なくとも金額に関しては事例2(4泊5日で総額25万円、会社負担が15万円)ならOKという目安にはなりますね。

とはいえ、実際には1泊2日でこの金額ならどうなのか、とか個人負担がない場合はどうなのか、など、判断に迷う(基準が分かりにくい)ケースは多いのかなと思っています(個別の判断になるかと)。

基準を超えてしまう場合には?

ちなみにこの基準を超えてしまう場合にはどのような取り扱いになるか、簡単に確認してみます。

個人

前述した通達というのは所得税に関するものです。

つまり、前述したような基準を超えた場合に税務上NG(=課税される)というのは、個人側の税金の話になります。

たとえば、あまりにも豪華な社員旅行(1人100万円で世界一周!)なんて旅行を企画した場合、「少額不追及」の範囲を超え、社員への給料とみなされてしまい、その社員がその分だけ所得税を多く払わなければならないことになります。

会社に旅行に連れて行ってもらったけど、あとから税金を負担させられるのね・・・なんてちょっと興ざめな気もしてしまいますね。

法人

法人の場合、福利厚生としての費用であれば、経費にすることが可能です。

もしも給料として課税されることになった場合、社員の分は「社員の給料」であれば経費にすることができますが、役員に対するものは注意が必要です。

役員に対する報酬は経費にするための要件がいろいろと定められており、このような社員旅行の場合、おそらくその要件を満たさないケースがほとんどかと思います。

そうなると税務上の経費とすることができない「役員報酬」となり、その分の税金(法人税)負担が増えてしまうことになるわけです。

「利益が出たから、社員旅行を!」というのは個人的にはよいことだと思いますが、「想定外の税金」を負担することにならないよう、計画段階でしっかりとプランニングしておくことが大切になります。

その他の注意点

ちなみに社員旅行の不参加者に対して、かわいそうだからといって社員旅行費用に相当するようなお金を支給したい、と思うことがあるかもしれません。

それをやってしまうと、社員旅行の参加者・不参加者ともに給料として課税されることになってしまうので避けたほうがよいと思います。

また、社員旅行費用に相当する金額を社員全員に「旅行費用」としてお金で支給してしまうと、やはり給料として取り扱うことになりますので、注意が必要ですね。


【編集後記】

世の中には「いろいろなことを生業にしている会社」、「強みにしている会社」があるんだなと改めて感じることがありました。
ブランド力のある大企業を目指すもよし、面白そうな仕事を探すのもよし、で
中途半端が一番面白くないのかも?なんて思ったり。

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