インターネットのニュース記事で、ある政治家の方の演説会でのコメントが掲載されていましたが、どこかで聞いたことがある話だなと感じました。
内部留保を使い切るとは?
その掲載されていた記事によると、演説会の内容は以下のようなものでした。
・利益を大きく上げている大企業への減税をやめるべき
・トヨタ自動車の連結内部留保は約20兆円(平成30年3月期)
・毎日1千万円ずつ使っても5480年かかる
・このお金を賃上げや正社員の雇用に回したほうがよい
内部留保が何を指しているのか、はっきりと分かりませんが、連結決算書を見ると利益剰余金が19.4兆円ありますので、おそらくこの部分を指しているのかなと。
おそらく、たとえ話として、この利益剰余金という内部留保を毎日1千万円使い続けたら、という表現をしているのだと思います(そうであってほしいと思っています)。
ただし、たとえ話としても、ちょっと誤解を生む表現ではないかと感じます。
この表現からすると、5480年間は毎日1千万円使い続けても大丈夫ということになってしまいますが、本当にそうでしょうか。
内部留保とは何者なのか?を考えておく必要があります。
内部留保=会社内に溜まっている現預金ではない
内部留保という言葉からは、内部に留保されている「現預金」というイメージを持ちやすいかもしれませんが、実際には「内部留保=会社内に溜まっている現預金」ではありません。
実際、連結決算書によると、現預金は3.9兆円です。
まあ20兆円でも4兆円でも変わらないよ!という気もしますが!?
では内部留保とは何者なのか。
内部留保にはいくつかの定義がありますが、狭義では利益剰余金を指すとされています。
内部留保を利益剰余金と考えるならば、「過去に会社が稼いできた利益で会社内に留保されているもの」ということになります。
利益剰余金というのは、上の貸借対照表の中だと、右下の純資産の中に含まれています。
貸借対照表の作りというのは、ざっくり書くと
・右側(負債、純資産)が資金の調達手段
・左側(資産)が調達した資金の運用先
ということになります。
例えば、お金を借りて機械装置を買う場合
・資金の調達(お金を借りて)=借入金が右側(負債)
・資金の運用先(機械装置を買う)=機械装置が左側(資産)
に計上されることになります。
この利益剰余金(過去に稼いだ利益)というのも資金の調達のグループに入ることになります。
もしも過去に稼いだ利益を全額現預金で保有し続けていれば、利益剰余金に相当する現預金が会社に残っているはずです。
そうであれば〇〇年使い続けても・・・という表現もしっくりきます。
ただ実際には、その稼いだ利益(お金)を設備投資に回したり、モノを仕入れたり生産のために使ったりしているわけです。
つまり、内部留保=現預金ということではなく、実際にはいろいろな資産、経費等に化けているものということになるのです。
お金がなかったら資本金があるじゃん?少し恥ずかしい過去・・・
ふと、自分自身の若かりし頃のことを思い出しました。
以前、会計も簿記もなにも分からない営業担当時代に財務の研修を受けていたときのこと。
貸借貸借表を見て、お金が足りないとしたらどうしますか?
という講師からの問いかけに対して、真剣に
「資本金があるじゃん!」
と思っていたことがありました。。。
講師に指名された人も同じような回答をしていました。
「これ、間違えやすいんですけど・・・」なんて講師の方が解説されてましたが、それでも当時はイマイチしっくりきていなかったような。。。
そんな人間が税理士をやっていていいのかどうか・・・
「だからこそ会計が分からない、苦手な方の気持ちが分かる!」ということで。。。
ちなみに前述の資金の調達先と運用先で考えると、
・資本金は資金の調達先
・そのお金はすでに左側(運用先)のどれかに化けている
ということになりますので、資本金というお金が残っているわけではないのです。
会社を強くするために純資産を厚くするのは必須
ちなみに財務基盤のしっかりした会社、強い会社を作るには、貸借対照表の純資産を厚くすることが大切であり、この内部留保をしっかりと残す、貯めておくことも必要です。
そのためにやるべきことは、必要な投資をせずにお金を溜め込むということではなく、しっかりと利益を残すということです。
会社が稼いだ利益から税金を払って残った利益が利益剰余金=内部留保になっていくわけですので。
「内部留保を使い切る」というのが、「内部留保を現金と見立ててどれだけ使えるか」というニュアンスだとすれば、雰囲気は分かるのですが、なんとなく微妙な表現、勘違いが起こりやすい表現だと感じたので、ちょっと整理してみました。
【編集後記】
昨日電車に乗っていたところ、斜め前に立った人が妊婦さんなのか判別ができず、少し戸惑ってしまいました。
マタニティマークを必死に探したものの見当たらないので、席を譲るのも変だし、さりげなく席を立っても目の前にいるオヤジが座ってしまいそうだし、などと頭の中でグルグルと。
結局、どこにもマタニティマークが付いていないので妊婦さんではないと判断しましたが、少し調べてみると、マタニティマークを付けにくく感じて、付けない人も結構いるのだとか。
堂々と付けてくれた方がお互いに良い気がするのですが、付けにくいと感じさせてしまう環境って寂しいですよね(妊婦さんに間違えるのは失礼かなと思うと声かけにくいのです・・)。
【昨日の1日1新】
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