会社が儲かっているか、事業が儲かっているか、を判断するための数値にはいろいろありますが、会社内・グループ内で比較をするなら、税引後の利益で考えてみるのも有効です。
儲かっているかどうかを判断するのはどの数値か
会社が儲かっているかどうか、事業が儲かっているかどうか、を判断するためにはどのような会計上の数値を使うのが有効でしょうか。
会社によって、事業によって、経営者によって、いろいろな考え方がありますので、1つではありません。
とにかく売上規模の拡大が大切と考えて売上高を基準とする考え方もあるでしょう(儲かっていることとイコールかどうか、という問題はありますが)。
本業の中でももっとも中心的なもの、商品自体が稼ぐ利益である売上総利益(粗利)が大切という考え方もあります。
*売上総利益=売上高 ー 売上原価
また、販売費や一般管理費などの営業活動に必要な経費を売上総利益から差し引いた「営業利益」こそが営業活動の結果得られる利益であり、重要視すべきという考え方も正しいと思います。
*営業利益=売上総利益 ー 販売費・一般管理費
また営業活動とは直接的な関係がないもの(利息、配当、資産の売却損益など)や法人税などの税金をどう考えるか?というのも考え方次第ではあります。
このように、損益計算書の段階利益などと呼ばれますが、
・売上総利益
・営業利益
・経常利益
・税引前利益
・税引後利益
のどの利益を基準として考えるのかについて、絶対的な正解はありません。
ただし、どれを中心として考えるか次第で、事業に対して、会社に対しての見方が変わってくる可能性はあります。
似たような業績。会社に与えるメリットが大きいのはどっち?
たとえば次のような2つのケースで考えてみます。
A事業部とB事業部ではどちらが会社に大きな利益をもたらしているか
会社内に2つの事業部があって、次のようなケースではどちらの貢献が大きいでしょうか。
税引前利益で比較する場合、人数など条件が同じであるとするならば、A事業部、B事業部は同じ売上、同じ利益を稼いでいますので、差がありませんね。
もしも、このケースで、A事業部だけが、税務上の経費として認められない交際費を使いまくっていたらどうなるでしょうか。
販売費・一般管理費:350のうち、「100」が交際費だったと仮定して税引後利益までで比較すると次のようになります。
法人税率を30%とすると、B事業部の法人税負担は27(利益90*30%)になります。
一方のA事業部は交際費100が経費にならないので、
法人税負担が57(「利益90+交際費100」*30%)
ということなってしまいます。
売上高から税引前利益までがまったく同じだったとしても、中身次第では、会社への貢献度合いが異なっている可能性があるわけです。
中小企業の場合、交際費が税務上の経費として認められるなど、単純に上記を当てはめることはできませんが、「税引後利益で考える」という部分が肝になりますので念のため。
子会社Aと子会社Bではどちらがグループに大きな利益をもたらしているか
次に子会社A(日本-税率30%)と子会社B(外国-税率20%)で比較してみます。
もうこちらは最初から結論の表だけですが。
税引前利益が同じでも、法人税率が違う(日本:30%、外国:20%)ため、税引後利益が違います。
ここまで単純ではないとしても、税率による違いによって税引後利益に関してグループ業績への貢献度は異なることになります。
比較するなら税引後の利益で考えてみる
会社内に1つの事業しかない場合や法人税率が異なる子会社等を持っていない場合であれば、上記のような比較をすることはありません。
税金計算上の経費として認められないものが多ければ、単に税負担率が増えていくだけということになります。
ただし、もしも複数の事業があったり、法人税率が異なる子会社を持っていたりする場合には、業績管理や業績比較をする際にこの税引後の利益を確認してみることが有効です。
・儲かっていると思っていた事業が、想像以上に税金負担が大きかった。
とか
・あまり儲かっていないと思っていた会社が、税負担率の小ささから、それなりに業績に貢献していた。
なんてことがあるかもしれません。
しかも、会社に残るお金は「税引後利益」から、ということもありますので。
業績管理などをする場合、どうしても目が行きがちなのが売上〜営業利益くらいまで、ということが多いのではないかと思いますが、「税負担」「税引後利益」という考え方も頭の片隅に入れておくと、今までとは少し違った見方が出来るのではないでしょうか。
【編集後記】
全国各地で熱中症による被害のニュースが多くなっています。
学校にエアコンがない=>子供を預けるのが不安=>だから学校を休ませる、なんていうケースもあるのだとか。
いろいろなニュースを見ていると、そうしたくなる気持ちも分かりますので、なんとも難しいところですね。
【昨日の1日1新】
*「1日1新」とは→詳細はこちら