「社長個人が負担すべき費用」を会社が負担した場合の税金計算上の取り扱いを確認してみます。
社長個人が負担すべき費用を会社が負担する?
社長個人が負担すべき費用を会社が負担してもよいのかどうか?
もしもそう聞かれたら、感覚的に「それはまずいでしょ!!」と考える人がほとんどでしょう。
ただし、「社長個人が負担すべき費用を会社が負担している」という意識がないまま、実は会社が負担してしまっているケースというのが、案外あるかもしれません。
たとえば
・社長の母校への寄付
・社長が個人的に親しくしている人への慶弔関係の費用(香典、花、弔電)
・社長が個人的に費消した飲食費
などについては、もしかするとあまり意識せずに「会社負担」としていることもあるのではないでしょうか。
ですが、これらのものについては会社の事業との関係性がなければ、会社が支払ったとしても税金計算上の経費とすることはできません。
以前、税務に関する下記の書籍をパラパラと眺めていたら、「社長のゴルフ練習場の費用負担」という項目がありました。
内容をざっくり書くと
・社長は従来、ゴルフをあまりやらなかった
・取引先との付き合い上、ゴルフをやることが必要になった
・そのためにゴルフの練習が必要
となり、その練習費用を会社が負担してもよいかどうか、というものでした。
ゴルフが好きな社長なら「練習も好きでやってるんだからダメでしょ!」と分かります。
一方、「付き合いでゴルフが必要。そのためには練習も必要。」なんだから、経費でもよいのでは?という疑問もなんとなく分かる気がします。
で、結論としては、ゴルフ練習は「接待行為ではなく、ゴルフの技術習得も法人の業務に直接必要なものではない。」ということで、やはり「個人が負担すべきもの」と扱うことになるということでした。
ゴルフが好きか嫌いかで取り扱いを変えるわけにはいかないので、やむを得ないのでしょうが、実際問題としては
・接待ゴルフをするにはそれなりに練習が必要
・ゴルフが嫌いな人なら、練習も接待するためにやらざるを得ないもの
と考えたくなるのも理解できますね。
原則として社長に対する報酬
で、このように「個人が負担すべきもの」と考えられる費用を会社が負担した場合、それはその社長に対する報酬として取り扱うことになります。
詳細は割愛するとして、役員に対する報酬を税金計算上の経費とするためには、様々なしばりがあります(毎月の支給額が同額であること、等)。
そのため、この種の「個人負担すべき費用」について会社が負担すると、
・会社として、一旦は経費に計上
・ただ、税金計算上の経費として認められない可能性が高い
・報酬として社長に対しては給与課税もある
ということになりますので、注意が必要です。
前述したように「無意識のうちに」「悪気もなく」負担したものであれば、なおさら「えっ?」という思いも強くなるかもしれません。
ちなみに
だったら税金払えばいいんでしょ?
という感覚の人もいるかもしれません。
たしかに、税金の世界・税金計算上という観点からは、それでも問題ありません。
ただし、
・そもそも会社としてそれでいいの?
・上場企業であれば、「対株主」という観点から問題ないの?
といったあたりのことは意識すべきではないかと思っています。
金額の多寡の問題ではありませんので(と思っています)。
線引きはあいまいにしないことが大切
個人が負担すべき費用なのか、会社が負担しても問題ない費用なのか、については、厳密に考えると分かりにくい部分もあるかもしれません。
また、社長自身が判断に迷った時に、たとえば社内の経理担当者に確認したとしても、その担当者は社長に気を遣って「社長が負担すべきものです」とは言えないかもしれません。
そのようなことを考えると、やはりこの境目の線引き(境界線)は、普段からあいまいにしないことが大切だと考えています。
一旦あいまいにしてしまったり、今回は特例で・・・なんてことをやってしまうと、いつまでも基準を作ることができず、毎回判断に迷う(あるいは取り扱いを間違える)ことになってしまいます。
誰に何を聞かれたとしても、
「堂々と」「100%」会社が負担すべきものである。
と言えるかどうかを1つの基準とする、というのもアリだとは思います。
【編集後記】
この週末、久しぶりにゴルフの練習場に行ってきました。
痛風発作やら引越しやらで、2ヶ月以上ぶりの訪問でしたが、1月から打ち放題打席エリアが禁煙に変わっていたようです。
打ち放題の打席は使用しないので直接の影響はないのですが、少しずつでも進んでいるのは好感がもてますね。
【昨日の1日1新】
*「1日1新」とは→詳細はこちら
某駅にある焼き鳥屋
某駅にあるコインパーク