財務諸表といえば、貸借対照表と損益計算書を思い浮かべる方が多いと思いますが、経営者であれば貸借対照表への理解を深める意識が大切だと考えています。
財務諸表への理解の第一歩は損益計算書から
「社会人であれば財務諸表くらい読めるようになりましょう!」
こんな表現を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
ただ、
・財務諸表とは具体的に何をさしているのか?
・財務諸表が読めるとはどういうレベルのことなのか?
というと、結構あいまいだったりもします。
それでもこのような表現がいつも使われるということは、それだけ財務諸表への苦手意識がある方が多いということなのでしょう。
一般的に財務諸表といえば、貸借対照表、損益計算書をイメージすることが多いと思いますが、他にキャッシュフロー計算書もありますし、株主資本等変動計算書や連結財務諸表などもあります。
その中で、経理部門以外の社員であれば、まずは損益計算書の概要を把握することが第一ステップになります。
損益計算書というのは、基本的に分かりやすいのが特徴です。
・売上がいくらくらいか?(会社の規模が分かる)
・利益がどれくらいか?(会社が儲かっているかどうかが分かる)
については、数字を見て、自社の過去や他社と比較すれば、ざっくりと状況を把握することができます。
また、この損益計算書の利益には次のような種類があります。
・売上総利益
・営業利益
・経常利益
・税引前利益
・税引後利益
正確にではなくても、それぞれについて「なんとなくこんな利益」ということがイメージできれば、第一段階としては十分なのではないかと思います。
経営者であれば貸借対照表への理解を
ただし、経営者やそれに近い立場であれば、前述のような損益計算書(損益情報)への理解だけでは足りません。
やはり貸借対照表への理解が必要になります。
なにも「貸借対照表で使われる勘定科目や細かい会計基準を理解しましょう」と言っているわけではありません。
貸借対照表というと、上の図のようなボックスをイメージして、重たい気分になる方がいるかもしれません。
・資産にはどんなものが入っているのか?
・負債にはどんなものが入っているのか?
・純資産ってなに?
を教科書的に学ぼうとしても面白くありませんし、経営に役立てることも難しいと思います。
以前ブログで書きましたが、会社や経営者が最後に頼れるのは「お金」です。
この貸借対照表のボックスを、「お金」を中心にして読み替えてみると、なんとなくイメージが湧きやすくなるのではないでしょうか。
例えば
・現金預金(資産):お金そのもの・・・多いほうが良い
・売掛金などの債権(資産):近いうちにお金に変わるもの
・借入金(負債):お金を調達する手段
・利益剰余金(純資産):利益から税金を引いた残り
のように、この貸借対照表というボックスの中でお金がどのように動いているのかを考えてみるイメージです。
これを意識することは、「会社のお金を増やすには何が必要か?」をきちんと考えるのに有効な方法です。
ちなみに「お金を確保する」という観点からは、利益から税金を払ってお金を残したり、借入金や出資によって資金を調達することが有効であることが分かります。
儲かっている人か?お金をたくさん持っている人か?
そうは言っても、やはり貸借対照表よりも損益計算書の方が大切なのでは?と考える方がいるかもしれません。
その場合には、次のように考えてみてはいかがでしょうか。
例えば、自分の持ち物(100万円くらいの高価なもの)を個人に買い取ってもらう場合、安心して買い取ってもらえるのは、次のどちらでしょうか。
・最近、事業が好調で儲かっている人
・現時点でとにかくお金をたくさん持っている人
瞬間的に見るならば、
・最近儲かっている人(損益計算書なら利益が出ている状態)
よりも
・現時点でお金をたくさん持っている人(貸借対照表なら現金預金がたくさんある状態)
のほうが「お金を払ってもらえる」という点では、信頼度は高いのではないでしょうか。
なお、損益計算書が不要と言っているわけではありません。
長期的に見れば、お金を貯めるためには当然利益が必要になりますので。
ただし、損益計算書はやろうと思えば、短期的に取り繕うことができてしまうという問題があります。
それに比べると、現金預金については実際に存在しているものですから、「間違いない」「信頼できるもの」であるということが言えるわけです。
おわりに
せっかく月次決算をしていても、損益計算書だけを眺めて終わり、という経営者の方が結構多いのではないかと思います。
その場合には、まずは月次決算であれ、それ以外の決算であれ
・貸借対照表を見るクセをつける。
・前月、前期末、前年同月などと比較して、増減の原因や「お金」への影響を確認してみる。
・お金の流れをイメージした貸借対照表の見方を理解する(顧問税理士等に教えてもらう)。
というところから始めてみてはいかがでしょうか。
【編集後記】
昨日は、とあるセミナーに参加してきました。
ゲストスピーカーはかなり個性が強い税理士の方でしたが、なかなか面白い話を聞くことができました。
世の中にはいろいろなタイプの税理士がいるなぁとしみじみと感じました。
【昨日の1日1新】
*「1日1新」とは→詳細はこちら
築地 一功
コメント
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