貸倒引当金はどのように計算するか?税金計算上(法人税)の取り扱い。

前回、債権などの回収ができなくなりそうな場合には貸倒引当金の計上を検討する必要があると書きました。

今回は具体的にどのように計算すべきかを簡単に整理してみます。

貸倒引当金の計上について

税金計算上(法人税法上)、貸倒引当金の計上が認められている法人は限られています。

具体的には

*資本金が1億円以下の法人(資本金等の額が5億円以上の法人等の100%子法人を除く)等
*銀行、保険会社等、リース会社等

といった会社です。

また、認められているからといって、どれだけ計上してもOKというわけでありません。

いくらまでなら税金計算上の経費として認められるか?
という限度額の計算方法を簡単に確認してみます。

貸倒引当金の税金計算上の取り扱い。どんな法人に認められている?
売掛金など債権の回収ができなくなった場合、貸倒処理や貸倒引当金の計上を検討する必要があります。 今回は、税金計算上(法人税法上)、貸倒...

限度額の具体的な計算方法:債権を2つに区分

税金計算上、経費として認められる金額には限度額が設定されていますので、その計算方法を確認してみます。

まずは、会社が期末に持っている金銭債権を「個別評価金銭債権」と「一括評価金銭債権」の2つに区分します。

個別評価金銭債権

個別評価金銭債権とは、

期末に持っている金銭債権(売掛金や貸付金、保証金などの返還請求権等)のうち、「貸倒れその他これに類する事由による損失が見込まれるもの」

とされています。

具体的には、その相手先(債務者)が次のような状態の場合が該当することになります(正確な表現だと長くなるのでざっくりとしたイメージだけですが)。

(1)その債務者について、更生計画認可の決定などがあったことにより、弁済が猶予されることになった場合

(2)その債務者について、おおむね1年以上債務超過の状態が継続し、事業好転の見通しがないなど、債権の一部について取り立ての見込みがないと認められる場合

(3)その債務者について、会社更生法の更生手続開始の申立等の事実が生じている場合

(4)外国の政府等の債務の履行遅滞等により、経済的価値が著しく減少し、かつその弁済を受けることが著しく困難であると認められる場合

税法全般にいえることですが、法律上、正確に書くとかなり長く、分かりにくくなるため、上記(1)〜(4)は短めに端折ってますので念のため。

つまりこれらに該当する場合には、その金銭債権は「個別評価金銭債権」になるということになります。

一括評価金銭債権

一括評価金銭債権とは、

売掛債権等(売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権)のうち、個別評価金銭債権を除いたもの

ということになります。

債権の区分ごとの限度額計算

債権の区分(個別評価金銭債権/一括評価金銭債権)に応じて、税金計算上の経費として認められる金額(損金に算入できる限度額)が異なります。
(文字で表そうとすると分かりにくいのですが)

個別評価金銭債権

前述した個別評価金銭債権の内容に応じて、それぞれ限度額の計算方法が次のとおり定められています(それぞれ債務者ごとに計算します)。

(1)弁済猶予の場合の限度額

個別評価金銭債権の額 - 担保権実行等により取立てが見込まれる金額 ー 5年内弁済予定額

(2)債務超過の場合の限度額

取立て等の見込みがないと認められる金額

(3)更生手続開始の申立等の事実が生じている場合

(個別評価金銭債権の額 ー 実質的に債権と見られない金額 ー 担保権実行等により取立て等が見込まれる金額)*50%

(4)外国政府等による履行遅滞等の場合

(個別評価金銭債権の額 ー 実質的に債権と見られない金額 ー 保証債務の履行等により取立て等が見込まれる金額)*50%

一括評価金銭債権

一括評価金銭債権については、次のいずれかの方法により限度額を計算することになります。

*貸倒実績率の場合

一括評価金銭債権 * 貸倒実績率(過去3年間の平均貸倒実績率)

*法定繰入率の場合

(一括評価金銭債権 ー 実質的に債権と見られない金額) * 法定繰入率

法定繰入率は業種別に定められています。
・卸売業、小売業 10/1,000
・製造業 8/1,000
・金融、保険業 3/1,000
・割賦販売小売業等 13/1,000
・その他の事業 6/1,000

貸倒実績がない場合であれば、貸倒実績率はゼロになりますので、必然的にこの「法定繰入率」を採用することになります。

おわりに

改めて書いてみると、文字だと分かりにくいですね。。。

もうちょっと分かりやすく表形式などのほうが良かったと思うので、加筆するかもしれません。

ちなみにこの貸倒引当金。
・税金計算上で認められるかどうか
・その場合の限度額の計算
について書いてきましたが、会計上は、必要であれば計上しておくことが望ましいです。

たとえ税金計算上の費用としては認められなくても、です。

その場合は、貸倒引当金を計上し、経費にならない部分は税金を払っておけば良いだけであり、その税金も払いっぱなしではなく、いつかは取り戻すことができるものになりますので。

その意味では、少額で資金繰りへの影響もない金額であれば、あまり気にする必要もないのかもしれません。


【編集後記】

週末は娘の高校の文化祭を見学に行ってきました。
世代が違うからか校風の問題なのかは分かりませんが、「自分だったらこのチャラっとした学校の雰囲気には馴染めないなぁ・・・」なんて感じながら、うろうろしていました。
まあ子供が楽しそうなのでいいのですが。。

【昨日の1日1新】
*「1日1新」とは→詳細はこちら

四谷津之守坂入口のひもの屋
娘の高校の文化祭見学


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