試作品を作ったときの費用処理の注意点。会計と税務では取り扱いが異なることがあります。

製造業の会社などでいわゆる「試作品」を作る場合、その試作品を作るためにかかった費用の取り扱いは、会計と税務とで異なる可能性がありますので、注意が必要です。

試作品を作るためにかかる費用とは

製造業であれば、新製品を開発するときには、必ず試作品を作ると思います。

いろいろと試行錯誤を繰り返しながら、ようやく新製品が完成することもあれば、マイナーチェンジのためほとんど苦労することなく完成することもあるかもしれません。

どちらのケースにしても、試作品を作るときにはいろいろな費用が発生します。

・試作品を作るための原材料
・試作品を作るための人件費
・試作品を作るためのさまざまな経費
・研究のために他社品や競合品を購入する費用
などなど。

これらのものはすべて、試作品を作るための費用ということになります。

では、このような試作品を作るための費用については、どのように経理処理をしていけば良いでしょうか。

すべてを経費にしてしまってよいのかどうか?
というのが気になるところかと思います。

会計と税務で処理方法が異なる場合とは?

処理方法が同じもの

試作品を作ったものの、すべてが使い物にならなかった場合、どのように取り扱うべきでしょうか?

この場合、会社に残ったものは、使い物にならない試作品の残骸だけです。

もちろん、会社にとって何の価値もない、使い道のないものということになります。

時期がきたら、あるいはすぐにでも産業廃棄物として廃棄することになるでしょう

このように、試作品がうまく作れずに何の価値もないようなものである場合には、その試作品を作るのにかかった費用は経費として処理することになります。

会計と税務で処理方法が異なることはありません。

会計であれ税務であれ、価値がなく捨てるしかない残骸、ゴミは資産として考えることが相応しくないからです。

なお、税務上、その試作品を廃棄していない場合には「価値があるんじゃないの?」と見られてしまう可能性がありますので注意が必要です。

また、試作のつもりだったけど販売できる製品が作れたので販売する、ということであれば在庫として計上することになります(会計でも税務でも)。

処理方法が異なるもの

次に、例えば、機器を製造している会社が試作品として機器を作った場合を考えてみます。

その試作品が何の使い物にもならない、捨てるしかない場合には、前述の通り、経費として処理します。

一方、もしも試作品に何らかの価値がある、使い道があるため、会社に保管したり、その後のテスト等で使用する場合には、会計と税務とでは処理方法が異なることになります。

会計上の取り扱い

堅苦しい表現・説明は抜きにして、とりあえず研究開発費は基本的に費用処理することが会計のルールになっています。

その研究開発費が、将来、収益(利益)を生み出すものに繋がっているかどうか分からないためです。

で、この研究開発には、新製品の試作品の設計や製作が含まれています。

つまり、非常に単純に書いてしまえば、試作品を作るための費用は、その試作品をその後、何らかの用途に使用したとしても、研究開発の範囲内である限り、研究開発費として費用処理することになるわけです。

税務上の取り扱い

もしも、その試作品である機器をデモ機やテスト機として使用したり、サンプルとして展示したりする場合、その試作品が本来であれば固定資産として取り扱うべきものであるならば、固定資産として取り扱う必要がある、というのが税務のルールです。

税法では取得(製作)した経緯や使用目的(研究開発目的)は加味されず、あくまでもその資産そのものの属性で判断することになるからです

つまり、その試作品が工具器具備品となる要件(金額、使用可能期間など)を満たしている限り、工具器具備品として固定資産計上して減価償却していくことになります。

なぜ取り扱いが異なる?

会計と税務の違い、の両者の目的が異なるために取り扱いが異なるとされています。

*会計の考え方:
将来の収益(利益)獲得に繋がるか分からないものを資産計上するのは望ましくない(費用の先送りを防ぐ)

*税務の考え方:
あくまでもそのものの性質や機能から判断する

ただ、普通の感覚からすれば、どっちかに合わせてほしいという気がしますがどうでしょうか?
目的が違うと言われてしまうとそれまでですが、分かりにくく、管理もしにくいですよね。

ちなみにこの試作品が本当にいわゆる「試作品」なのか、価値があるのかないのか、などはあくまでも実態で判断することになります。

・社内で試作品と呼んでいるから
・社内では試作品のつもりだから
・100%の性能が出ているわけではないから価値がないはず
など、会計上、税務上の判断を主観だけで行うことにはリスクがあります。

会社としては、その試作品には価値がない「つもり」でも、例えば、デモなどで使用していれば、価値はあるわけですので。

この実態の判断は難しいところですし、内容によっては顧問税理士などに相談したほうが良い場合もあるでしょう。

いずれにしても、内容次第で、経費なのか資産なのか取り扱いが変わる可能性がある、ということだけでもまずは認識しておいた方が良いかと思います。


【編集後記】

昨日の甲子園の高校野球では、埼玉県代表の花咲徳栄高校が初戦を突破しました。
ふと調べてみると、ベンチ入りメンバー18人のうち、埼玉県出身は2人でした。
もっとも、野球部員でなくても県をまたいで高校に通うことは普通ですし、関東出身が13人いますから、まあそんなものなのでしょうね。
そこまで行きたい高校やそこまで打ち込みたいものがある、というのは良いことだなと。

【昨日の1日1新】
*「1日1新」とは→詳細はこちら

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