「税務調査に強い」とか「税務調査経験が豊富」など、税務調査への対応力をアピールしている文言をよく見かけます。
顧問先にとって本当にそれは大きなメリットになるのでしょうか?
きちんと調査に対応することは当たり前
税務調査と聞くと、嫌な気分になる人がほとんどだと思います。
悪いことはしてなくても、なんとなく気が重くなったり、心配になったり。
そしていざ調査の場面では、税理士に対する次のような不満の声を聞くことがあります。
・きちんと当局や調査官に対して主張できない。
・理不尽な調査や手続きの不備についても受け入れてしまう。
・税務署と会社のどちらの味方なのか分からない。
そんなときに「税務調査に強い」税理士がいると聞けば、頼りたくなる気持ちは分かります。
ただ、そもそも上記のような「税務調査に弱い」ことが問題なのであって、
「主張すべきことは主張してきちんと対応する」
というのは、本来は当たり前のことなのです。
税務調査の場面でできることには限界がある
税務調査の場面で税理士ができることといえば、まずは
・会社側の考えをしっかりと主張すること。
・調査官の指摘がおかしければきちんと反論すること。
ということです。
このためにはしっかりとした税法の知識が必要ですし、裁判の事例などについてもしっかりと研究しておくことが望ましいです。
ですが、税務調査のときにできることにはどうしても限界があります。
それは、すでに起こってしまった事実が目の前に存在しているからです。
その事実に基づいて会社側の見解を主張するわけですが、その事実が税務上認められないものであれば、主張が認められる可能性も低いでしょう。
いくら税務調査に強いといっても、目の前の事実を変えることはできないということは理解しておかなければいけないということです(やってしまったらそれこそ仮装隠蔽で大問題ですね)。
つまり、調査の段階では、ある程度勝負がついてしまっていることが多いと言えるのではないでしょうか。
「戦わずして勝つ」ためには事前の準備が大切
税務調査で指摘を受けたり、余計な税金を追徴されることを防ぐためにも、「戦わずして勝つ」ことを意識する必要があると考えています。
(大河ドラマ「おんな城主 直虎」の影響ではありません!?)
そして、そのためには事前の準備が大切です。
事前の準備とは「税務調査が入ると分かってからの準備」ではなく、取引の段階で税務リスクを洗い出してきちんと検討・準備しておくということです。
つまり税務調査の段階では、
「取引が、調査で指摘されても問題がない(しっかりと主張できる)事実」
になっているわけです。
例えば、親会社と子会社の取引価格が問題になりそうな場合で考えてみます。
事前準備なく、営業部門任せの適当な価格で取引をしてしまった場合、その価格が妥当であることをなんとか証明しなければなりません。
場合によっては説明不能ということもあるかもしれません。
この場合の事前準備とは、価格を取り決める段階で「いくらなら妥当か」をしっかりと検討した上で価格を決め、その記録を残しておくということです。
調査の段階では、「妥当な価格」「説明できる価格」で取引されたことが事実であり、余計なリスクを取ることもなくなります。
税金を多く払えば良いわけではありません
「税務調査で余計な戦いをしない」というのは、余計な税金を払う、安全サイドで税金を払っておくということでは決してありません。
以前、「税務調査で指摘がないことがいいことなのかどうか?」という議論を聞いたことがありました。
つまり「指摘がない」ということは、「多く税金を払いすぎている可能性もあるのでは?」という観点からすると、必ずしも良いとは言えないという考え方です。
もしも会社が税務調査で指摘を受けたくないがために余計な税金を払ってしまっているとしたら、全く意味がないことになります。
おわりに
繰り返しになりますが、日頃からしっかりと準備をしておくことが必要だということが分かります。
処理に少しやましい気持ちがある法人・個人であれば、「税務調査に強い」税理士を利用する価値はあるでしょう。
そうではなく、今後しっかりと組織を成長させていこうという考え方であれば、
日頃から「戦わずして勝つ」ことを念頭に置いてきっちり準備・対応してくれる税理士
としっかり組んでいくのが良いのではないでしょうか。
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【編集後記】
ゴルフの松山英樹選手が世界ランク3位になったようですね。
一時期ほどの調子ではなさそうですが、どこまで上がれるか、楽しみです。
【昨日の1日1新】
*「1日1新」とは→詳細はこちら
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