税関による「関税」「輸入消費税」の税務調査〜輸入事後調査の結果が公表されています

財務省のホームページに輸入事後調査の結果が公表されています。
http://www.mof.go.jp/customs_tariff/trade/collection/ka20161104b.htm

これは、平成27年７月〜平成28年６月までの１年間に税関が行った「輸入申告に対する事後調査」の結果です。

（追記）次のリンクが平成28年７月〜平成29年６月の１年間分の結果です。

https://www.mof.go.jp/customs_tariff/trade/collection/ka20171107b.htm

1 税関による事後調査とは
2 公表された事業調査の結果の概要
3 注意すべきポイント
4 最後に

税関による事後調査とは

外国から商品などを輸入する場合、輸入する人は「関税」や「輸入消費税」を申告・納付しなければなりません。

この申告・納付がきちんと行われているかを税関が事後的に確認するのが「事後調査」です。

財務省のホームページには、事後調査の目的が次のように記載されています。

輸入事後調査は、輸入貨物の通関後における税関による税務調査であり、輸入貨物に係る納税申告が適正に行われているか否かを事後的に確認し、不適切な税額等を是正するとともに、輸入者に対する適切な申告指導を行うことにより、適正な課税を確保することを目的として実施しています。

目的に書かれている通り、「税関による税務調査」ですので、調査が入る場合にはいろいろな資料を揃えなければなりません。

具体的には
・輸入取引に関する契約書
・仕入書
・会計帳簿
などといったものです。

そして調査の結果、申告に謝りがあれば
・関税、消費税の修正申告をする。
・不足していた税金等を納付する。
ということになります。

公表された事業調査の結果の概要

公表されている調査結果を貼り付けてみます。

＊財務省HPの表をスクリーンショット

・4,302者の輸入者を調査して、申告漏れ等があったのが2,977者（69.2％）
・前年は、3,545者を調査して申告漏れ等が2,363者（66.7％）

さらにその前年のデータを見てみましたが、似たような結果でした。
・・・3,614者を調査して申告漏れ等が2,427者（67.2％）

こう見ると、調査に入られた会社の約７割で何かしらの申告漏れがあったということになります。

また納付不足額が多い上位５品目の結果です。

＊財務省HPの表をスクリーンショット

細かい情報が載っていないので詳細は不明ですが、例年似たような品目で申告漏れが起こっているということくらいは分かる感じですね。

注意すべきポイント

同サイトには、申告漏れの事例も掲載されています。

ありがちなものとして２つほど貼り付けておきます。

２つの事例に共通しているのが、輸入した商品に関連した費用を、商品の輸入とは別に支払っているということです。

商品という現物があれば、輸入時に申告が漏れてしまうことはないと思います。

ところが、現物の輸入と違うタイミングで、支払いだけが発生する場合、うっかり申告が漏れてしまうということが起こり得ますので注意が必要です。

どのような場合に注意が必要か、内容が気になるという方は一度上記サイトで誤りやすい事例等に目を通してみることをお勧めします。

普段の取引のなかで、申告が漏れているものがないかどうか、専門家等に相談しながら、一度整理してみることも必要かもしれません。

最後に

もし申告が漏れていたことが分かると、事務処理はかなり面倒です。

輸入の修正申告と支払自体は、乙仲業者さんに依頼すれば対応してもらえるはずです。
あとは請求された通りに支払うだけなので、簡単です。

面倒なのは消費税の申告です。

・修正申告により輸入消費税を支払う。
・それにより、修正の対象となった課税期間における「支払った輸入消費税」が増える。
・その課税期間の消費税について申告書を修正する。
→支払った消費税が多くなるため、その分を還付してもらう手続き（更正の請求）。
このような一連の処理をすることになります。

１課税期間だけならいいですが、複数の課税期間で誤りがあった場合には、すべての課税期間分について、この一連の手続きが必要となります。

一定の条件を満たせば、修正で支払った消費税は還付されることになるため、実質的な損失はわずかです（関税や加算税などは費用負担しなければなりませんが）。

ですが、事務処理はかなり大変になりますし、「管理できていない会社」とみなされて、ちょこちょこ事後調査に来られるというのも面倒です。

そのためにも、このような処理漏れが起こらないよう、「輸入取引関連での支払」がある場合には、常に申告のことを意識しておきたいところです。